姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
「うぅ…」

ペットボトルの栓を開け、先に秋穂に渡すと案の定眉間にシワを寄せていた。

「やっぱ、紅茶のほうが良かったんじゃない?」

「いいの…
私はもういいから、嵐くん飲んで…」

「うん(笑)」

嵐人は、クスクス笑いながらペットボトルを受け取った。


それから街の方に出て、クレープ屋に向かう。
「ここは、人が多いね…」

「人気の店だからね。
とりあえず、並ぼうか?」

レジに並ぶ。
「いつものバナナたっぷりクレープでい?」
「嵐くんは?」

「え?僕?」
「うん。
たまには、嵐くんの食べたいクレープがいい!」

「そう言われてもなぁ(笑)
僕も好きだよ?バナナたっぷりクレープ」
「ほんとに?無理してない?」

「うん、してないよ!」 
「じゃあ…そうする!」
少しして順番が来る。

注文してクレープを受け取り、テラス席に座る。
「はい、アキ!あーん!」

秋穂の口元にクレープを持っていくと、パクっと食べた秋穂。
「ん!美味しい!」

その可愛らしい仕草に見惚れながら、嵐人も一口かぶりついた。


クレープを仲良く食べて、買い物して帰ろうということになり………

「アキ、僕トイレ行ってくるからここで待ってて?」

席を立ちながら嵐人が言うと、秋穂も慌てて立ち上がる。

「私も行く!」

「すぐ戻って来るよ?」

「ううん!私も行く!」
嵐人にしがみつくようにくっついた。

トイレ前で嵐人を待っていると……

「君、めっちゃ可愛いね〜!」
「俺等とお茶しよ?」
お約束のように、男性達に声をかけられた秋穂。

「え……あ…」
ぶるぶると首を横に振る。
そして心の中で(嵐くん、早く出てきてー)と叫んでいた。

「ねぇ、行こうよぉ〜!」
そう言って、手を掴まれた。

「や…やだ…」

すると、反対側からグッと引き寄せられた。
「秋ちゃん、ごめんね!遅くなっちゃった!」

「え……一基く…!?」

「え?こいつ等誰?」

「あ…」
思わず一基に縋るような視線を送る。

「悪いんだけどー、彼女は俺のなの!
諦めてくんない?」 
一基が男達に鋭い視線で言い放った。

「は?」
「なんだよ、彼氏と来てんのかよ…」
舌打ちして男達が去っていった。

「秋ちゃん、大丈夫?」

「あ…う、うん…ありがとう…」

切なく笑う秋穂に、一基は安心させるように微笑み頭をポンポンと撫でた。
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