姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
姫と憧れ
「――――じゃあ…僕行くね」

梅雨も明け、本格的に暑くなってきた夏。
いつものように、講義室で切ない別れをしている嵐人と秋穂。

「あ…やっぱり、私サボろうかな?
で、嵐くんの隣りにいる!」

「アキ!ダメだよ!
ちゃんと、真面目に講義受ける約束でしょ?」

最近秋穂の駄々っ子が酷くなっている。

それは……嵐人のアルバイトが始まって、週三の割合で離れ離れになっているからだ。

嵐人は何でも屋のような会社で働いていて、その時その時で、色んな仕事に借り出されている。

ちなみに今は、夏のイベントスタッフとして働いている。

週三で、しかも一日5時間の勤務。
たったそれだけなのだが、秋穂にとってはその時間の留守番は苦痛でしかない。

なのでアルバイト中以外は、秋穂の依存はとても酷いのだ。 
 
嵐人に言い聞かせられて、なんとか納得した秋穂。
切なく瞳を揺らしていた。

「………」
ペアリングに触れながら気持ちを落ち着かせ、教授が来るのを待つ。

すると……
「あの…すみません…」

突然、声をかけられた。

「え……」

「隣いいですか?」
女子学生が、先程嵐人が座っていた席に座ろうとする。

「あ、は、はい…!」

いつも秋穂は遠巻きに見られていて、あまり話しかけられない。
隣の席も、必ずあいている。
嵐人や一基を通じてしか、あまり話さないからだ。

なので、びっくりして慌てて荷物を自分の方に荷物を寄せた。

「ここしかあいてなくて…」

遠慮がちに、その学生が座った。
教授が来て、講義が始まる。

隣に座った女子学生は、ちらっと秋穂を見つめた。
「綺麗…//////」

この女子学生も秋穂に憧れていて、隣に座れたことを内心喜んでいた。


講義が終わると、秋穂は急いで教科書等を鞄につめる。
そして、急いで講義室を出た。

「ん?あ……」
急いで出たため、秋穂は椅子の下にハンカチを落として出てしまっていた。

それを、隣に座った女子学生が気づき拾う。

慌てて秋穂を追いかけるが、秋穂はいなくなっていた。

「ど、どうしよう……」

とりあえず持ち帰り、来週の同じ講義で渡そうと自身の鞄にしまうのだった。
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