姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
それから秋穂は、ゆっくり自宅マンションに戻っていた。

「あと…四時間くらいか…」
嵐人が帰ってくる時間までまだある。

街をプラプラしようかと頭の中をよぎるが、一人ではやはり不安で無理だ。
 
「それにしても、暑いな…」
秋穂は近くのコンビニに向かい、飲み物を買って帰ることした。

コンビニに入り、ドリンクを選んでいると……

「飛河…さん?」

「え?
…………あ…」

「あ、あの…わかります?
今日、○○の講義で隣に…」

「はい。こんにちわ」

「髪、切ったんですね…!」

「え?あ…はい/////さっき…」

「可愛い〜」

「あ…ありがとうございます//////」

「あ!そうだ!
……………これ!」
そう言って、ハンカチを渡してきた。

「あ…私の…!」

「椅子の下に落ちてて…」

「そうだったんだんですね。
すみません、ありがとうございます……!」

「良かった!
次、一緒の講義の時に渡そうと思ってたから」

ハンカチを受ける。
すると、ふとその女子学生が持っていたパンフレットに目が行く。

「それ……」

「あ、夏フェス?
今から行こうと思ってて!
青神が出るんです!
私、ファンで!」

「そうなんですね。
あ…そこ、今彼が働いてて…」

「そうなんだ!
あ、一緒に行きます?(笑)
彼氏さんに会えないかな?」

「え!?」
(嵐くんに会える!!!) 

秋穂は「行きます!!!」と、乗り出すように言ったのだった。


会場に着き、嵐人を探す。

「飛河さん、どうします?
私は向こうの方で、席を取ろうと思ってるんだけど……」

「あ…私は、彼を探します」

「わかりました!
じゃあ…ここで!」

小さく手を振り合い、別れる。
秋穂は、その辺をうろうろして探し出す。

(こんな大勢の中から、見つかるのかな?)

そんなことを考えながら歩いていると、意外と早く見つけることができた。

嵐人は、観客席に座る観客達の整理をしていた。
「あ…嵐く……
…………………」

秋穂は声をかけようとして、やめた。
そして、切なく瞳を揺らしその場を後にしたのだった。
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