姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
「気持ちい〜」

「だろー?(笑)
秋ちゃん、手、繋ご?
下、結構ヌメヌメしてて滑るから」

一基の差し出した手を、遠慮がちに握る。
一基は、その小さな手をギュッと握りしめた。

「手、ちっさ!」
「そうかな?」

「だって、俺の手で覆えるもん!」
「ほ、ほんとだ…(笑)」

「向こうの大きな石まで行こ?」
「う、うん」

手を繋いでゆっくり歩く。
大きな石があり、そこに並んで腰掛けた。

「一基くん」
「んー?」

「連れてきてくれて、ありがとう!」
「フフ…どういたしまして!」

「さっきまで酷い嫉妬してて、嫌なことばっか考えてたの…
でも、一基くんのおかけで気分転換になった!
ありがとう!」

「嫉妬?」

「うん」
秋穂は、先程の話をする。

一基は「そっかぁ…」と呟いて、秋穂の頭をポンポンと撫でた。
そして、続けて言った。
「心配しなくても、ランは秋ちゃんしか見えてないよ!」

「うん、そうだよね……!」

「この前なんかさ!
面白いことあったんだ!」

「え?」

「ランと仕事始めてすぐの頃、仕事を教えてくれてた女の先輩がランのこと狙っててさ!
彼女がいるって言ってんのに、しつこくて…
俺から見ても可哀想なくらいにさ。
ついこの前だったかな?
“彼女の写真見せて”って言われてたから、俺が見せたんだ。
ほら、この前撮ったやつ!
その先輩にわからせてやろうと思って。
そしたら……
急に、声かけて来なくなったんだ(笑)
ランの彼女が、こんな可愛すぎると思わなかったみたいで!
写真見せた時の顔、ほんとウケた!(笑)」

「そうなんだ…!」

「それに、ランもいつもはっきり言ってたし!
“僕は彼女が大好きだから!”って」

「……/////うん、ありがとう//////」

一基が微笑むと、秋穂も嬉しそうに微笑んだ。


「――――もうそろそろ、帰ろうか?」
「うん」

一基が差し出した手を握る。

ゆっくり元の場所に向かう。
「秋ちゃん、ゆっくりでいいからね!」
「う、うん。
で、でもなんか…滑り―――――ひゃっ!!?」

「秋ちゃ…危な―――――」

「キャーーー!!!!!」

バッシャーーーーン!!!と水しぶきをあげて、二人は滑って転んでしまった。
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