姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
秋穂は、全て包み隠さず話した。

美容室の帰りに、コンビニで女子学生に会い、一緒にフェス会場に行ったこと。

嵐人に会えると思って会いに行ったが、女性に囲まれた嵐人を見て嫉妬してしまい、会わずに帰ったこと。

そこで一基に会い、嫉妬心を落ち着かせるために山の上の公園に連れていってもらったこと。

そこの川に入り、滑って転んでびしょ濡れになったことを――――――


「…………そっか…」

「滑って転けて、全身びしょ濡れになって、服が濡れて透けたから、しかたなく一基くんがシャツを貸してくれたの」

「でもどうして?」

「え?」

「“一基と二人で会わないで”って約束したでしょ?」

「それは……」

「それは?」

「さっきも言ったように、嵐人くんが女の人に囲まれてるのを見て嫉妬したから……
だから、私もその……」

「僕を嫉妬させようとしたんだ?」

「ごめんなさい…」

「アキ。僕を嫉妬させても、何も良いことないよ?」

「うん…そう…だね…」

「アキの言ってた、女性客達と楽しく話してたってやつ」

「え?うん…」

「それ、アキの話してたんだよ」

「え?私…?」

「うん。
僕、基本的に冷静に淡々と仕事するようにしてるから。
確かに接客もするから、全く笑わないってわけじゃない。
でも、営業用みたいな感じなんだよ。
今日のアキが言ってたやつは、その女性客の一人が同じ大学の二年生で、僕とアキのこと遠巻きに見てて“ラブラブで羨ましい”とか“彼女さん綺麗ですね〜”とか褒められてたんだ。
アキのこと、憧れてるって言ってたから思わず笑ったんだよ?」

「そ、そうだったんだ…」

「うん。
言ったよね?
“僕はもう、アキしか見てない”って!
アキ以外の人は、本当に興味ないんだ。
だから、不安にならないで?」

「うん、嵐くんごめんなさい…」

「ううん。
さぁ、アキ。
ベッド行こうね?」

「え?」

「え?って、僕はまだ“嫉妬中”だよ?
僕を嫉妬させたらどうなるか、わかっててもらわないと!
いい機会だから、教えてあげるよ!
“その身体にね!”」

その日。
秋穂は夕食も食べさせてもらえない程、嵐人の激愛を身体に刻み込まれた。


嵐くんは、物腰の柔らかい青年じゃない。
嫉妬深くて、独占欲の強い人だった。

………まぁ、私はその方が嬉しいけど!(笑)
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