姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
「○○大学前〜、○○大学前〜」

そして、大学の最寄り駅に着く。

だいたいこの駅は、嵐人や秋穂と同じ大学の学生が降りることが多い。

少し押されるように降りて、みんな同じ方向に歩いていく。

駅から徒歩10分程の所にある、大学。
大学が近づくにつれて、秋穂の嵐人の手を握る力が強くなっていく――――――

大学に着いて、秋穂が受ける講義室に向かった。
「アキ、どこに座る?」

「前の方…」

「ん。
じゃあ…ここにしようか?」
 
「うん…」

秋穂が席に座り、隣に嵐人が座った。
そして、秋穂の手を両手で包み込んだ。

「ギリギリまでいるからね……!」
「うん…」

「アキ、楽しい話しようか?」
「うん。どんな?」

「そうだね。
今度の休み、アキの好きな△△山公園に行こ?
お弁当作ってさ!」
「うん、行きたい」

「で、帰りに……」
「クレープ?」
 
「当たり!
バナナたっぷりクレープ、食べて帰ろ?」
「うん」

「フフ…楽しみだね!」
「うん」

そんな話をしている二人を遠巻きに見ながら、他の生徒達が噂をしている。

「秋穂ちゃんだ〜」
「可愛いよね〜!」

「隣にいる人って……」

「あー、秋穂ちゃんの彼氏!」
「てか、付き人みたいな(笑)」

「あーやって、ギリギリまで秋穂ちゃんの傍にいて、出て行くの」

「そうなの?(笑)」

「しかも!毎回よ!
講義終わったら迎えに来て、一緒に次の講義室に移動して、ギリギリまで傍にいて……って感じ!
もちろん同じ講義の時は、ずーっとベッタリなの(笑)」

「そうなんだ〜(笑)」

そんな話をしていると、開始5分前になった。

「………あ…アキ、僕もC室に行かなきゃ!」
「あ…うん…わかった…
すぐ、来てね?」

「うん!大丈夫だよ!」

小さく手を振り合い、嵐人が講義室を出ていった。
それを切なく見つめ、秋穂は教科書などを鞄から出し講義を受ける準備を始めた。


一方の嵐人。
少し急いで講義室に向かう。

講義室に入ると、数人の男子達が「ラン〜!」と手招きしていた。

嵐人も軽く手を上げ、その男子達の所に向かった。
「おはよ!」

「「「おはよ〜!」」」
「ラン、レポートしてきた?」

「うん」  

「それ、見せ――――」 
「ダメだよ。自分でやりな」

「えー!!頼むよ〜」

「ダメ!
一基(いっき)はいつも、楽ばっか考えてるもん」

「ケチ!」

「ケチで結構」

「秋ちゃん、口説くぞ!!」 
 

「は?」
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