姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
午前一時を回った頃――――お疲れ様会が解散し、嵐人達が居酒屋からゾロゾロ出てきた。

「タクシー、何台呼ぶ〜?」

「俺達は、歩いて帰ります!」
「私は迎えが来ますので!」

「ランは?
タクシー?」
「ここからなら、ゆっくり歩いて帰るよ」

それぞれ帰ろうとしていると……

「ら、嵐くん!!」

「え……」
「え!?秋ちゃん!!?」

秋穂がいた――――――

「アキ!!?
何してるの!!?
こんな所で、危ないでしょ!?
サエは!?
なんで、家に帰ってないの!?」

慌てたように嵐人が駆け寄る。

「嵐くんのお迎えに来たの。
危なくはないよ。
ほら!防犯ブザー持ってるし! 
少し行った所に、駐在所あるし。
サエちゃんは帰った。
一度家に帰ったけど、早く嵐くんに会いたくて、あと驚かせたくて来たの!」

「そっか…
とりあえず、帰ろ?」

「うん!
あ!一基くんも、またね!」

「うん。
てか、中入って来ればよかったのに!」

「うーん…
ほら、スタッフさんのお疲れ様会だし!」

「まぁ…そうだけどよ…」

「一基、誰?」

「あー、ランの彼女っす!」

「マジか!?
めっちゃ、可愛い〜!//////」
「ヤバい…//////可愛すぎ!!」
あっという間に囲まれる、秋穂。

「あ…」
秋穂は嵐人の服を掴み、隠れるようにくっついた。

「すみません、僕達は失礼します!」
嵐人も秋穂の手を掴み、スタッフ達に軽く頭を下げてその場を後にした。


そして歩きながら、秋穂に言う。
「―――――アキ」

「ん?」

「迎えに来てくれたこと、凄く嬉しかった!」

「フフ…うん!」

「でも……」
グッと繋いでいた秋穂の手を引き寄せ、顔を覗き込んだ。

「……/////」
急に嵐人の顔が近づき、顔を赤くする秋穂。

「もう、やめて?
ほんと、危ないから…!」 

「え?あ、う、うん」

「アキはね。
僕の傍にいて、僕に依存しててくれたらいいんだよ?
ずーっと、僕が守ってあげるから……!!」

「嵐くん、どうしたの?
なんか、おかしい…」

「だって、アキが僕から離れて行きそうなんだもん。
飲み会“楽しんで”なんて言うと思ってなかったし、そもそも!飲み会に行っていいなんて言うと思わなかった!
挙句の果てに、一人でこんな遅くて暗い時間に迎えに来るし……」

「それは……」

「それは?」

「たまには私だって、嵐くんを甘えさせてあげたかったから!
守るなんておこがましいけど、私だって嵐くんのために何かしたいと思ったから!
だから“行かないで”って言わないように、我慢したの!」

「そっか!
うん、その気持ち凄く嬉しいよ!」


「私は離れたりしないよ!
絶対に!
ずーっと、一緒にいたいから……!」

秋穂は嵐人に抱きつき、縋るように言った。
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