姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
姫とクリスマス
それからも順調に交際を続け、秋穂は“結婚”を考えるようになっていた。

しかし……

「嵐くん、見て〜!」
秋穂がスマホ画面を見せてくる。

結婚式場のサイトだ。

「綺麗だね!」

「でしょ?
良いよね〜」

「うん、そうだね!」

「………」 
それだけ?

「アキ?
どうしたの?」

「ううん…」

大学を卒業し就職し、ちゃんと安定してから結婚したい嵐人。
対する秋穂は、今すぐにでも籍を入れたいと思っている。

嵐人は、結婚の話をはぐらかし続けていた。

わずかに、二人の想いがすれ違っていた―――――


『―――――それは、秋穂が悪いわね!』
嵐人のバイト中、サエと電話で話している秋穂。
サエに咎められていた。

「わかってるよ…」

『わかってない!
秋穂。
同棲と結婚は、全く違うのよ?
嵐人からすれば、ちゃんと本当の意味で秋穂を守れるようになってからって思うのが普通でしょ?
おままごとじゃないんだから…!!』

「違うの!!
私は…………」

『は?私は?』

「う、ううん…」

『とにかく!!
嵐人から言ってくるまで、結婚関係の話はやめな?
じゃないと嵐人、結婚が嫌になるかもよ?』


わかってるよ。
でも私はただ……

“予約”したいだけ。

嵐くんと“確実に夫婦になれる”っていう約束がしたい。

入籍や結婚式は、いつでも構わない。

嵐くんの口から“僕のお嫁さんはアキだよ”って聞きたいだけなの。

だって、もしかしたら……

結婚したくないかもでしょ?

私は“一人じゃ何も出来ない”役立たずの女なのだから……



秋穂はこの日から“結婚の話を”しなくなった―――――――――
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