姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
「―――――嵐くん」

「ん?」

「これ、見て?」

「………え?ハンドメイド?」 

そんなある日。
秋穂が、ある広告を見せてきた。

そこには“私達と一緒に、アクセサリーや雑貨を作ってみませんか?”と書かれている。

「うん、ここね。
女性だけの職場で、サエちゃんの知り合いの人が経営してるの!
だから、私でも働けそうじゃない?」

「………」

「ん?嵐くん?」

「どうしたの?急に…」

“働く”なんて、言ったことないのに……

「え?ほら、私も働かないとね!」

「どうして?
僕がいるでしょ?」

「私も大学卒業したら、何かしないとだし!
嵐くんだけに、負担をかけられないよ!」

妻でも何でもない“ただの恋人の私”なんだから!

「負担?
僕は、アキのことを“負担”だなんて思ったことないよ?
アキのことは、僕が守るって言ってるでしょ?
働かなくて大丈夫だよ?」


秋穂は、一人でデパートに嵐人へのクリスマスプレゼントを買いに来ていた。

一人で外出自体苦手な、秋穂。

なのでネットでだいたいの物を決めて、後は実際に見て買うだけにしている。

「―――――じゃあ…どうすればいいの?
私は“なんのために”傍にいるの?」

ポツリと呟く。
モヤモヤしていて、買い物に集中出来ない。


大学卒業すれば、秋穂には何もなくなる。

ただの“恋人が”傍にいていいの?

卒業したら、本当に“私達は結婚できるの?”


「はぁ…」
しまいには、ため息が出ていた。

「あれ~?秋ちゃん?」
声をかけられ、振り向く。
一基がいた。

「一基くん!」

「フフ…俺達、よく偶然会うね(笑)
なんか、スゲー!」

「フフ…そうだね(笑)」

「何して……って、ランへのクリスマスプレゼント?」

「あ、うん」

「何買うの〜?」

「マフラーと手袋だよ。
ありきたりだけど、だいぶ古くなってきてるみたいだから!」

「そっか!
いいなぁ~ランは」

「え?」

「秋ちゃんからプレゼント貰えるなんて!」

「そうかな?」

「そうでしょ!」

「迷惑じゃないかな?」

「は?迷惑?」

「私の存在は、嵐くんの支えに少しでもなってるかな?」

不安そうに揺れる秋穂の瞳。
一基は秋穂の手を取り、歩き出した。
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