姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
一基に連れられて向かった先は、あるイベント会場。

そこに嵐人がいた。

「嵐くん」

「………ランってさ。
スゲーよな?」

「え?」

「俺はただ、軽い気持ちでランにバイトに誘ったんだ。
ランが社会勉強しなきゃって言ってたから。
ほら、今は秋ちゃんの親におんぶにだっこだろ?
衣食住全て」

「うん」

「“そのこと”ずっとランは気にしてた」

「え?」

「“このままじゃ…アキの両親はアキを僕にくれない”って」

「え……」

「何もかも、面倒見てもらってる男に嫁がせる親なんていない。
“この人なら、大切な娘を任せられる”
そう思わせないと、僕はきっと一生アキと結婚出来ないって」

「嵐くん…そんなことを…?」

「だから、いつも必死に頑張ってる。
本当は、もっとバイトの時間増やして稼ぎたいのに“秋ちゃんが寂しがるから”って週三で留めてる。
でもその限られた時間で、必死にやってる」

「嵐くん…」

「………秋ちゃん」

「ん?」

「秋ちゃんは、バカだよ」

「え…!?」
(ば、バカ!?)

「ランの一番近くにいて、なんで気づかないの?
ランにとって、秋ちゃんは“たった一人の大切な女”
そんなこともわからないの?」

「一基くん…」

「あいつのこと、信じてやれよ!」

「うん…!!//////」


一基と別れて、秋穂はプレゼント探しに戻った。
先程とは違う表情だ。

楽しそうで、嬉しそうで、そして……何かを決意したような顔だった。


そんなある日。
嵐人が言った。

「アキ」

いつものように嵐人に抱きつき、頬を擦り寄せていた秋穂に向き直る嵐人。

「ん?」

「来週のクリスマス。
ここのホテルを予約したんだ!」

「わぁ〜!素敵だね!」

「でしょ?(笑)
ホテルの美味しいコース料理を食べて、二人だけの素敵な夜を過ごすんだ!」

「フフ…うん!ありがとう!楽しみ!」

「うん!」


そして………

クリスマスを迎えた。

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