姫と僕〜僕達は盲目的に想い合う〜
昼食が済み、嵐人と秋穂達は固まって講義室に向かう。

みんな同じ講義を受けるからだ。

「嵐くん、これ見て」
秋穂がスマホの画面を見せる。

「ん?わぁー、綺麗だね!」

「これ、あの△△山公園からの景色だよ!
嵐くんを待ってる時に、サイト見てみたの」
「へ?そうなの?
こんな場所あったかな?」

「ほら、見えにくいけど……ここに白い柵が見えるでしょ?
だからきっとここ、頂上のあの場所だよ!」

「ほんとだ…!」
「これを撮ったカメラマンさんの見せ方が上手いのかもだけど、綺麗だよね!」

「フフ…そうだね!」

講義室に向かいながら話している嵐人と秋穂を、後ろから一基達が見ている。

「ほんと、ラブラブだよね〜(笑)」
「フフ…そうね!」

「秋ちゃん、ランには“あんな笑顔”見せるんだもんなぁ〜」

「当たり前じゃん!彼氏なんだから!」

「わかってるし!!」

「フッ…一基、ヤキモチ妬いてんの?(笑)」

「はぁ!?うっさいよ!!」
そう言いながらも、一基は秋穂ばかり見ていた。

講義室に着いてからも、秋穂の隣(嵐人と反対側)に座り、秋穂の横顔を見続けていた。

チラッと嵐人を見ると、やっぱり嵐人も秋穂を見ていた。


残りの二コマの講義が終わり、トイレ前で秋穂を待っている嵐人と一基と友人達。

「一基達、帰りなよ」
「いいじゃん!駅まで一緒帰ろ?」

「それって“アキと”だろ?」
「当たり前じゃん!」

「なんか最近、あれだよね」
「は?」

「妙にくっついてるよね、僕達…ってゆうか、アキに」
「そう?」

「うん、そう」
「別にいいじゃん!
手は出してないんだし」

「………」
「………」

そんな二人の会話を聞いていた友人が、フッ…と笑い出す。

「「何?」」
嵐人と一基が怪訝そうに見る。

「あ、いや…
一基はさ、友達が沢山いんじゃん?男女関係なく。
フリーの女も結構いる。
なのに一基は、彼氏持ちの秋穂ちゃんに惚れてる。
しゃーねぇことだけど、なんでよりによって“彼氏持ちの子”なんだろなぁーって(笑)」

「………フッ…そうだな(笑)」
「そうだね…(笑)」

嵐人達は、苦笑いしていた。
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