二人の想い   ~素直になれない~
高岳祥子、34才。
見た目は40過ぎの地味な事務員。
決してOLでは無く事務員がしっくりくる。

「何か買って帰るものない…、うん分かった、牛乳だけで良いんだよね」
どしゃぶりだって関係ない。
いつもと変わらない、仕事帰りの母との電話やり取りは。
そんな時に傘の中へ突然男の人が飛びこんできた。

「キスしてもらえませんか、もちろん『ふり』で良いんで!」
有無を言わせず壁ドンされた。

大人になってキスなんかしたことないし、それ以前に幼稚園児だって知らない人とキスなんかしない。

『こっちに来たよな?』
『まだこの辺にいるぞ』
雨の中、カメラや機材を持った人達が駆けていく。

何が起こったのか分からない。
「ごめんね。助けてくれてありがとう
このことは誰にも話さないでね」
爽やかに走って行った。
どこかで見たことのあるような人…。
ただ誰が話すか!
こんなバカげた夢のような話を。

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