二人の想い   ~素直になれない~
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愛斗さんが部屋を出て二人きりになってしまった。
この部屋にいるのは『木本裕斗』じゃなくて『城野本海翔』なんだもん。
話し掛けてくれるけど、まるで知らない人のようで緊張する。

愛斗さんがいないと落ち着かない。
容姿は同じって言うけど、笑顔や話し方、歩き方も全然違う。

会場に早く戻ろう。
出来れば愛斗さんと一緒に戻りたかったけど。

「母が待ってるんでもう戻りますね
舞台、頑張ってください」
何を話して良いか分からず部屋をあとにした。

トイレの前で待ってても変じゃないかなぁ。
私みたいなのがこんなところでふらふらしてたら怪しまれるし。
そんな時、愛斗さんを見つけた。
…、誰かと抱き合ってキスしてる?

見た瞬間、逃げるように走ってた。
付き合ってる人がいるの?
それともやっぱりキス魔なの?

逃げることはなかったけれど、早く母のところに戻りたかった。


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