二人の想い   ~素直になれない~
会計を済ませて店から出ると、暗闇の中からフラッシュが光った。
「もしかして、また撮られた?」
楽しかった気持ちがどん底に、また二人に迷惑がかかると思った。

だけど、彼女は俺の気持ちとは反対に明るい声で、
「私は大丈夫。
悪いことは何もしてないし…、だからもうキスはしないでね」
酔いが回った彼女が可愛い。
どんどん可愛くなっていく姿をずっとそばで見守りたい。
そうだな、悪いことは何もしてない。
そう考えると気持ちが楽になる。
彼女にはひとつひとつ教えられる。
これからは堂々とすれば良いんだ。
俺は『海翔』じゃないんだから。

可愛いんだけど…、
送ってくタクシーの中で、気持ち良さそうに舟をこぎだした。
そんな飲んでないはずなのに、彼女を見て警戒のなさに心配になった。

先に帰っていたお母様に連絡を入れた。
『よっぱらいの祥子さんを玄関まで送り届けます』と。
まさかシャンパン3杯程度でこんなになるとは思わなかった。
可愛い姿を見られたのは良いけど今後は気をつけないと。

お母様は申し訳なさそうに玄関まで迎えてくれていた。

店を出たとき、記者に写真を撮られたことを話し謝った。
「何か悪いことをしたの?」
親子で同じ事を言ってる。

「悪いことをしてないなら堂々としてれば良いんでしょ」
この親子は凄い。
信頼関係ができている。

「今日はありがとう。
今はなにを言っても覚えてないだろうから、また明日連絡をさせますね」
ニコニコしている彼女を託して待たせていたタクシーで帰った。
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