重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

01 開幕

 早朝の澄んだ空気を、私は歩きながら吸い込んだ。

 今ではもう通り慣れてしまった軍関係の施設が集まる棟の広い廊下を抜けて、突き当たりにある黒い扉。

 ただこの目にそれを映しただけなのに、私の心の中には歓喜が溢れた。

 何故かというと、もうすぐ辿り着くあれを開けば、誰よりも好きなあの人に会うことが出来るから。

 最低限の礼儀である扉を叩いて入室前の応答を待つことをしないのは、別に私が入室前の礼儀作法を知らない訳ではない。

 毎朝、早い時間に王族の一人がこうして現れることを、執務室の中に居る主だって重々に承知しているから、いつの間にか、暗黙の了解が双方に出来てしまっていた。

 ……いえ。『今は多忙なので、まだ後日』と、彼に面会を断られ続けた私の苦肉の策とも言える。

 カツカツと踵の高い靴音が立ち止まり、私は取っ手を持って大きく扉を開いた。

「おはようっ! デューク」

「「ナッシュ団長。ラバーン副団長。おはようございます。失礼します」」

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