重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 ルイ様は私の後方を見て、不思議そうな顔をした。

 私は彼の視線に釣られるようにして後ろを振り返れば、そこに居たのは数日振りに会うデュークだったのだ。

 真っ直ぐにこちらを見ていた自分が私たち二人の視線を集めていると気がついた彼は、その場で王族への忠誠を誓う姿勢を取った。

「あれは、我が国の獣騎士団団長のデューク・ナッシュですわ……あの……?」

 ルイ様はデュークの名前を聞いて、何故か表情が抜け落ちてしまったようだった。

 確かデュークが名を上げたあの戦いで、ダムギュア軍は歴史的な大敗を喫することになった。

 我が国では英雄になったデュークの名を、ルイ様は知っていたのかもしれない。

「……いいえ。なんでもありません。それでは、失礼します。アリエル様、お体にはくれぐれも気をつけて」

「えっ……ええ。気をつけてお帰りください」

 急に身を翻したルイ様に私は驚きつつも、別れの言葉を口にした。

 ……もしかして、私が配慮不足だったかもしれない。

 けれど、双方の国で戦争は、人の心に爪痕を残すもの。

< 116 / 216 >

この作品をシェア

pagetop