重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 足音高く歩き廊下を曲がり、城へ帰る渡り廊下に出た私は、苦虫を噛み潰したような表情をした初老の男性に出くわした。

 騎士団長のデュークの執務室のある棟は、軍務大臣である彼が管轄しているから、この場に居たとしても何らおかしくはない。

 もしかしたら今朝は、朝の王族への謁見が早く終わったのかもしれない。

 確か……今日はお父様である陛下が珍しく城を出て視察に向かわれるという予定があったはずだ。

 だから、いつもより早めに重臣を集めた謁見を切り上げたという可能性は高そうだわ。

 お互いに立場ある私たちは、ここで相手を無視してしまう訳にはいかない……どんなに相手が、気に入らなかったとしてもね。

 挨拶と少々の嫌味の応酬なんてし慣れていて、なんとも思わないわよ。

「あら! ヘンドリック大臣。おはようございます。爽やかな、良い朝ですね」

 にっこりと微笑んだ私に、髪がそろそろ寂しくなりそうなヘンドリック大臣は殊更に恭しく礼をした。

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