重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 私側の切羽詰まった様子などどこ吹く風で、デュークはのんびりした口調で返した。

「まあ……何かしら? デュークが私に質問なんて、とても珍しいわね」

「あの……」

 デュークが私に話し出そうとしたその時に、彼は眉を顰めて素早く私の腰に腕を回すと大きく跳躍した。

—————そう、一瞬の間に。

 私の視界に映る光景は二人が座っていた椅子に、何本かの小刀が突き刺さっていた。

 嘘……嘘でしょう。デュークがもし危険に気が付かなかったとしたら、私たち……あのナイフにあのまま。

「姫。良いっすか。怖いなら目を瞑っていても良いんすけど、ここから動かないでください。闇雲に動かれると予測出来なくて、俺もやりにくいんで」

「わっ……わかったわ!」

「良い子っすね」

 注意事項を言ったデュークは咄嗟の私の答えを聞いて、良い笑顔で頷いた。

 そして、着ていた服を引き裂きながら、何倍もの大きさに膨れ上がるようにして黒い獅子へと獣化した。

 鼓膜を震わせた大きな唸り声は、確かに獣。けど、陽の光の元、神々しく現れた黒い獣は、一気に上空へと飛び上がった。

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