重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

26 旅

「まあっ! 見て見て、デューク。あれって、何をしているの?」

 初めて馬車の御者台に乗った私は、古びた食器を置いて道に座り込んでいる男性を見て、隣に座り手綱を持つデュークに聞いた。

「ひ……っアリエル。悪いけど、それって庶民は何も驚くところじゃない。ちなみに、ああいう人を見たとしても、失礼だから、まじまじ見たりしない。わかった?」

 こそこそと耳打ちするデュークに、私はこくこくと何度も頷いた。

 これは……もしかしたら、暗黙の了解で触れてはならないことだったのかもしれない。

 不思議に思ったことを普通に聞いただけだったんだけど、微妙な表情をしたデュークの意味ありげな言いように、反省した私は何度か頷いた。

 一応は、私たち二人は現在二人旅を装ってはいるものの、周囲には距離を取って護衛が取り巻いている。

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