重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 けれど、ダムギュア王国では違うのだという。思わず表情を曇らせてしまった私に、デュークは苦笑した。

「……真面目で良い子のアリエルは、絶対にわからないかもしれないけど、そういった嗜虐的な一面を持つ人間は多い。虐待されるのが自分でなければ、誰でも良い。一種のショーのようなもので、眉を顰めながらも、心は楽しんでいる。そんなもんだ」

「……デューク?」

 彼がどこか遠くを見るような目になったので、私は不思議になった。

 デュークは戦闘能力の高い獅子獣人で、誰かからそんな境遇に遭わされたことなんてないだろうと私は思ってしまうからだ。

「いや。何でもない」

 デュークは慌ててさっきまでの空気を拭い去るようにして、きっぱりと言った。一瞬で踏み込んではならない壁を築かれたようで、私は慌てて話を変えた。

「あ。ねえっ! あれって、何かしら?」

 布を大きく広げて物を並べている商人を見て指を差すと、デュークはあーっと大きな息をついて苦笑した。

「……あれは、外国のお菓子を売ってる。あれ、玩具みたいに見えるけど、食べられるんだ。食べたことがあるけれど、あんまり美味しくない」

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