重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 ここで表立って『デューク様は先の戦争で、目覚ましい活躍をされたではないですか。何故そんな彼が冷遇される謂れがあるのですか』などと、正々堂々と正論を論じたところで、そもそもの道理に反したことを敢えてやっている相手になど、何の意味もないもの。

 黙ったまま廊下を歩き出した私の後に、エボニーとアイボリーの二人も同じように続いた。

 カツカツと石床から硬質な音を響かせる高い踵を持つ靴は、私は個人的に言えばあまり好きではない。

 それもこれも、大昔から王族にはこの服装だと決められている慣習だから、国民の規範となるべき私が嫌だからと崩してしまう訳にもいかない。

 世の中は、本当にままならないものだわ。

「……挨拶すらまともに出来ない身の程知らずで怠惰な獅子は、聡明な姫様のお考えにいつ気が付かれるのでしょうか」

「ええ。本当に。か弱い女性に、その身を持って何も知らず守られているなど。最強の獅子との名誉ある騎士団長の肩書が、泣きますわね」

 エボニーとアイボニーはクスクスと忍び笑いをしたので、主人の私は彼女たちを振り返らずにそれを窘めた。

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