重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 ……異国のお香? あまり嗅いだことのない匂いだ。良い香りとはとても言えない。スパイシーな香りが鼻をついた。

「……なんすか。この匂い」

 デュークの様子が変だ。それは、私にもわかった。動作動作ひとつひとつが遅いし、息も荒くなってきている。

「これはな。お前ら獣人の身体を痺れさせる、特別製のお香だよ。高かったんだからな!」

 跪いたデュークは男の一人にお腹を強く蹴飛ばされて、地面に転がっていた。身動き一つしないデュークに、彼らは寄って行って暴行を加えていた。

 私はその光景を見て、悲鳴をあげることを必死で我慢した。

 だって、周囲は私が目を覚ましたことには気がついていないのだから、彼を助けられるかもしれない手段を捨ててしまうことは出来ない。

 ……このお香! お香の匂いを消せば、デュークは動けるようになるし私が彼らの手から逃れていれば、このくらいの人数、彼には簡単なものだ。

 誰も私のことなんて、見て居ない。デュークに夢中だ。何故かしら。彼に強い憎悪を抱いているように思える。

 私は手を縛っていた縄を必死で左右に振って外し、足の縄も近くにあったナイフで切った。

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