重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

30 暗闇の中の光(side Duke)

 俺には、実の父親を殺しかけた過去がある。

 金色の毛を持ち生まれてくるのが当たり前の獅子一族の中で、俺だけが珍しい黒色だったからだ。

 仕事に疲れて帰って来た父は、幼い俺を持ち上げて『本当に自分の子か?』と揶揄うように言った。

 今思うと、酒の席での戯れ言だったように思う。

 両親は愛し合ってはいたが、父は怠惰な獅子の性質通りに、働くことを嫌い、仕事をあまりしたがらなかった。

 あの日は仕事中に何か嫌なことがあって、イライラしていたのだろう。

 幼い子どもと身重の妻を養うために、あの人は休みたい怠けたいという自分の欲を曲げてまで、必死で働いてくれていたのだ。

 だが、幼い俺にそれは理解出来なかった。それを言われた母は悲しそうな顔だったし、母と俺の事を嘲られた事は、なんとなくわかったのだ。

 そして、気がついた時には血まみれで動かない父が居て、そんな彼の前に必死で庇って守っている母が居た。

 誰から?

 ……俺からだ。あまり良くない冗談をひとつ言っただけで、父は子どもに殺されかけたのだ。母の目には恐怖が浮かび、俺は祖父母の居る村に送られて、それから両親にはもう会えていない。

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