重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 思えばあの時、父も俺に応戦出来たのだ。

 幼い俺を殺そうと思えば出来たのに、あの人はそうしなかった。だから、母だって本来ならば言ってはならない言葉を言った父を許したのだろう。

 獣が珍しい毛色で生まれることは、たまにあった。白や黒、赤一色でまるで全身を一色で染められたかのように産まれるのだ。

 ならば、獣人にだって、それはあってもおかしくない。父母が俺との血縁関係を、本気で疑ったことはないだろう。俺の顔は父に良く似ていたのだから。

 ……事実関係は、それだ。けれど、庇護すべき子どもに殺されかけたという事実は、彼らを俺から遠ざけた。

 俺は母を守ろうと思ったあの時に、家族を失ってしまったのだ。


◇◆◇


「デューク! 早く帰りましょう」

 目の前で手を振って、俺の名前を呼ぶ育ちの良い女の子。大事に大事に育てられ、何も嫌なことなどなさそうなのに、彼女は彼女で葛藤を抱えているようだ。

「はいはい……了解っす」

 アリエルを、守らねばと思った。怒りに支配されそうなあの瞬間に、助けなければと思えば冷静になれた。

 もう俺は、あの暗闇に飲み込まれない。

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