重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

31 怒り(side Reinhard)

「ダムギュア側は、なんと言って居るんだ」

「……王太子の名を騙った獣人の生態を研究している団体の、単独犯であると」

 アリエルの護衛からの定期連絡が途絶えた、その日。

 偶然、王都にて所用で訪れていたプリスコット辺境伯の跡取りニクスは、即ユンカナン国王勅令の下、ダムギュア王国へと派遣された。

 それは、国王よりの使者であれば、それなりの身分である必要があり、彼であれば簡単に殺されないからだ。

 その身の持つ身分から、そして、生まれ持った非常に優れた身体能力から。ちょうど良く近くに居て、本当に助かった。

「そうなのか。たまには彼らも面白いことを言うな……」

「いかが致しましょうか」

 ニクスは口数が少なく無表情ではあるものの、有能で忠誠心が高く、目の前に居る僕の気持ちを良く理解している。

 王女である妹をそうとわかりつつ誘拐した挙げ句、その目的は彼女のお気に入りの獣人騎士団長であったらしい。

 だが、あちらの言い分では、アリエルが王女であることは知らなかった。

 だから、ユンカナン王国への敵意などは一切なかった。そして、王太子は一切関与しておらず、その男を狙う獣人の研究をしている妙な団体が勝手に仕出かしたことだと。

 僕の派遣した配下が聞き取りをした、妹姫アリエルの証言とは大きく違うようだ。

 もし、これが不慮の事故で王女を誘拐したという言い訳だとするならば下の下だろう。幼い子どもでも、もう少しましな理由を思いつきそうなものだが。

 だから、跪き待っているニクスは、わかっているのだ。僕がこれから言う言葉を。

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