重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 王都の一番人で賑わう大通りに辿り着き、幼い私が一番にしたことと言えば、いきなり走り出して傍近くに居た護衛を巻くことだった。

 一人で街を歩くのが目的だったので人の多い方多い方へと走り回り、気がつけば運動など慣れている訳もない私は、荒い息をつき薄暗い裏通りに立っていた。

 当時はまだ幼くて私の身を守るためとは言え、人がいつも取り巻いている状況が本当に嫌だったのだ。

 けれど成人になってしまった今では、その時にどれだけ無謀なことを仕出かしてしまったかが良くわかる。

 どれだけ、危険なことだったのかも。

 だけど、いつも人目に晒される堅苦しい城を出て、ただ一人の人間になれた私は、本当の意味での自由をこの時に初めて感じたのだ。

 見るからに身なりも育ちも良さそうな女の子が、そんな怪しげな場所に居て悪い連中に絡まれないはずもない。

 あっという間に大勢のガラの悪い男の人に周囲を囲まれて、何処に売ろうかと品定めされている時、怯えた私の耳にはのんびりとした余裕ある低い声がした。

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