重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「……職務上、違法行為を目の前にして見逃す訳にはいかないんでね。俺が偶然通りがかった自分たちの運の悪さを、どうぞ呪ってくれ」

 私の周囲を高い壁のように囲っていた男性たちが全員バタバタと音をさせて倒れてしまうのは、黒い影が舞ったと思った、その一瞬の後だった。

「あっ……ありがとうっ……ございます」

 もしかしたら、この後に自分はとんでもないことになってしまうのではという強い緊張感でカラカラに乾いていた口から、ようやく出て来たのはそんな言葉だった。

 その時は多分入団したばかりの新米騎士だったデュークは、無言で私の手を掴んでから歩き出すと、明るい陽光が差す大通りに出てから私に説教を始めた。

「あのさ。あんた……見るからに王都育ちでもなく余所者っぽいけど、あんな路地に一人で行くなんて本当にあり得ない。若い女の子がああいった連中に攫われて、どんな目に遭うか。あんたは、知っている訳ないよな……知っていたら、絶対に、泣き叫んでいるはずだ。良いか。二度と、あんな場所に入るな。俺があそこに居たのは、任務の途中で本当に、ただの偶然の奇跡だから」

 彼が淡々と言う、言葉の通りだ。

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