重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

06 眠り騎士

 血相を変えた護衛たちと帰城してから、全騎士団を出動させようとしていたお父様に雷を落とされて、あの時から私は兄同伴以外のお忍びが二度と出来なくなった。

 そして、二年後にやっと結婚出来る年齢になった私は、ユンカナン王国の王族として、騎士団の団長として任命された少し大人っぽくなったデュークと対面することになったのだ。

 『驚くだろうか。何を言われるだろうか』と胸を高鳴らせて、王を前にして若干緊張した騎士デュークは名乗り出て挨拶をした私を、まるで初対面のようにして扱った。

———-あ。覚えていなかったんだ。

 そう思った。例え私にとっては衝撃的な運命の出会いだったとしても、女性から浴びるように好意を寄せられるだろうデュークにとってみれば、きっとありふれた良くある出来事だったのだ。

 あれから、二年も経っているというのに、記憶に残っているはずもなかった。私は片時も忘れたことなんて、なかったのに……。

 デュークに忘れられているのだと悟った時、私はとてもショックだった。

 けど、自分を忘れられていたことは切ないけど、それはもう彼の勝手で仕方のないことだ。

 『あの時の事を、忘れてしまったの?』 と、こちらから切り出して『ああ。そんなこともありましたね』と、二度傷ついてしまうのもばかばかしい。

 必ず会いに行くという約束をしたのは、私の方だった。勝手に結婚を希望されて会いに行くと言われただけで、デュークの責任でもない。

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