重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 大人になるということは、だんだんと不自由になっていくことなのかもしれない。

 もし、人の事情など気にも掛けない子どもであれば、私のことを忘れてしまった彼を約束したのにと泣き喚いて散々になじっただろう。

 成人して結婚出来る年齢になった私には、流石にそれは出来なかった。

 そうして、静かに私の恋は、幕を閉じたはずだった。

 暗殺や誘拐の危険が付き纏う王族の一員の私が、たった一人の時間を過ごすことは、警備上の問題もあり、当然の如くあまりなかった。

  私が現在住んでいる薔薇の離宮は元々正妃であった、お母様に与えられていた宮だ。

 そんな薔薇の離宮の中であれば、少しだけ話は変わって来る。

 侵入者検知の魔法を掛けられ、堅固な警備を幾重に敷かれた離宮の中でのみ、王家の姫という身分を持つ私が人払いをしてしまえば短い一人の時間が許されるのだ。

 ふと気が向いて散歩することにした庭園には、薔薇の離宮の名前の通り、色取り取りの薔薇の花が咲いて、目にも鮮やかだった。

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