重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「あら。それならば、薔薇の離宮に、貴方の執務室を移すようにお願いしましょうか?」

「それは、誠に光栄ながら、謹んで遠慮するっす。ところで、姫」

「え? 何。デューク」

 私はその時、デュークの手触りの良さそうな艶やかな黒い毛の中に彼が着ていたであろう騎士服が破れているらしい生地を見つけた。

 私には良くわからないけど、服を脱ぐ間もなく彼は何かの理由があって慌てて獣化をしてしまったのかもしれない。

「……俺が、怖くないんすか」

 言いづらそうに言ったデュークの言葉を聞いて、私には彼が何を気にしているのかと、すごく不思議になった。

「どうして。こんなにも美しい姿をしている獣を、怖いと思うの? 私はちっとも怖くないわ。それに……だって、どんな姿でも中身はデュークだもの」

「俺の本当の姿は、こうした恐ろしい肉食獣です。姫のことを、この牙で引き裂いて食い殺すことだって……簡単に出来んすよ」

 まるで自分は凄く危険なのだということを表すように、私を脅かす意図でか低い唸り声をあげた。

 それすらも可愛く思えて、つい笑い声をあげてしまった。

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