重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「だって、私には三人もお兄様が居るのよ。兄と一緒にお風呂に入ることもあったし、夏には水遊びだって良くしていたもの」

「えっ……待ってください。それって、姫が何歳くらいまでっすかね?」

「えっと……一番年齢の近いジャンお兄様とは、私が八歳くらいまで、かしら。水遊びの時は、流石に下履きは履くわよ。もちろん」

 確か私がそのくらいの年齢までは、年の近いすぐ上のジャンお兄様とは良く入浴していたものだった。

 今思えばお兄様たちは母が居ない私が寂しくないようにと、あの時はとても気を使って傍に居てくれたのだ。

 自分で言うのもなんだけど、暑苦しいくらいに溺愛されていた妹だった。

「はは……そういうことっすか。殿下たちをとんでもない色眼鏡を付けて見ることになるところだったんで、ちゃんと詳しい事情を聞いといて良かったっす。国に仕える騎士としての忠義心が、根本から揺らぐところだった。危なかったー」

「え? どういう意味?」

「……姫。良いですか。言っときますけど、成人男性と幼い男児とは体の作りが全く違うっす。これめっちゃ大事なんで、試験に出るっすよ。覚えといてください」

 デュークはそう言ってしなやかな身のこなしで木の上に飛び上がり、あっという間に壁の上へと登った。

「デューク! お仕事がんばってね!」

 去っていく彼に慌てて声をかければ壁を降りる前の一瞬、黒くて長い尻尾が声に応えるようにして左右に揺れた。

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