重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 小さな布袋を取り出してデュークの胸へと押し付けた彼女のあっさりとした暴露に、彼は慌てた様子だった。

「ナッシュ団長。私も、経験があるんですけどね……求愛を断る時は、自分が悪者になるくらいの方が逆に優しいですよ。何かの言い訳を探してでも彼女を傷つけたくないくらいの情が湧いているのなら、納得出来るようにとことん話をした方が良いと思います。一度、これを引き受けた私が言うのもなんですけど、恋人が出来たと嘘をついて諦めさせようなんて、いかにも狡い男のしそうなことです」

 そう言って、振り向きもせずに颯爽と女性は去って行ってしまった。

 その場に残されたのは、私とデュークの二人。

 正確には私の背後には二人の侍女が居るけれど、主人の取り込み中には居ない振りをすることだって、彼女たちの仕事の内だ。

「……デューク。嘘を? なんで……そんなこと」

 溢れ流れ落ちる涙を拭いもせずにドレスの裾を握りしめたままで私が言えば、デュークは困った顔をしてハンカチを差し出してくれた。

 まだ私がさっきの衝撃を受けて動けないと見たのか、彼は優しく自分が涙を拭ってくれた。

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