重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「まあ。ヘンドリック大臣。何でもないですわ。私の目にゴミが入ったので、彼に診て貰っていました」

 私たち二人の間に漂う不穏な空気を察したのか、訝し気な表情を見せるヘンドリック大臣は私の言葉を、すぐに嘘だと見抜いたはずだ。

 私とデュークの二人には、何とも言えない表情だったし、目にゴミが入っただけにしては私は泣き過ぎていた。

「……姫がお気に入りとお過ごしになるのも、私は何も言いませんが。ナッシュは仕事中です。どうかお戯れは、程々になさってください。輿入れ前に妙な噂が立って、姫も自分に求婚者が居なくなってしまうのは本位ではないでしょう」

 わかりやすく嫌味な言い方だった。

 王家であることを笠に着て、職務中のお気に入りを呼び出し過ごしているのなら、とっくの昔に処女を失っていると思われても仕方ないのだと彼は言いたいのだ。

 この前、自分の息子を勧めた癖に……というか、自分の息子以外の求婚者を居なくさせることなら、お前の悪い噂を立てればすぐだぞとでも言いたいのかしら。

「おい。大臣、それは……」

< 60 / 216 >

この作品をシェア

pagetop