重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 私に対しひどい事を言ったと見たのか。気色ばんだデュークが自分の上司の前にと出ようとしたので、私は彼を片手で制した。

「ふふ。なんだか、おかしなことを言うのね。ある程度の身分を持つ私たち二人が、こんな廊下で濃密な時間を過ごしているとでも言いたいのかしら? 二人で密室に籠ったのなら、そんな噂が立ってもおかしくはなさそうだけど……そのような事実は、これまでになにひとつないわ。まるでこの私を脅したようにも取れる発言をする前に。もし、変な噂があるというのなら、その証拠固めでもした方が良いんじゃないかしら?」

 ヘンドリック大臣は何故か私が誰の娘でどんな身分を持っているのかを、その段になって、ようやく思い出したようだ。

 彼は大きく腰を折るお辞儀をして、笑顔の私に許しを求めた。

「……差し出がましい口を出しました。アリエル殿下。失礼しました」

< 61 / 216 >

この作品をシェア

pagetop