重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 俺たちは大事なものを守るその時のために、存在をしているのだから。

 友人の血を見て、そんな獅子の本能に従い理性が飛んだ俺は、自分自身でもそれが誰かを認識せぬままに、初戦で相手側の指揮官の首を取ってしまっていた。

 ということは、指揮官を失った敵軍は、総崩れになる他道はない。

 しかし、俺たちユンカナン軍も、これは誰も考えてもいなかった想定外の出来事だった。新兵一人が圧倒的な力で周囲の敵をすべて薙ぎ倒し、偶然とは言え敵の指揮官を討ち取ってしまった。

 だが、我が国の王は自国に被害が少なかったことに喜び、勝利の功労者である俺に獣騎士団団長職を与えた。

 皆が憧れるような立場となりそれが嬉しかったかと言えば、そうでもなかった。

 自分が自分でなくなってしまう、あの時間。獣としての本能が勝り行動を制御出来なくなる己を知ってしまうことなど、あまり喜ばしいものでもない。


◇◆◇


「……団長。どこ、見てるんですか」

「窓だ」

 今日は薄い青に灰色の混じる薄曇りの空だった。青々とした木の葉が、それを支える枝と共に窓の四角い枠の中にあった。

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