重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「そうですか……団長が急ぎで決裁するべき書類は、こちらです。すぐに目を向ける対象を、間違わないようにしてくださいね」

 副団長の白猫獣人マティアスは、怠惰な性質を生まれつき持つ俺に小言を言う係だ。

 そういった役目は彼も不本意だとは思うが『俺は獅子獣人の中では、だいぶマシな方』と言っても、獅子一族の実情を知らぬ彼には信じて貰えない。

「そういえば姫って、なんで朝にしか来ないんだろうな……」

 俺に懸想していることを全く隠すつもりのない、ユンカナン国の王女アリエル様は毎日城の中でも城壁の間際に位置する執務室のある棟にまで会いに来てはくれるものの、何か彼女なりの理由があるのかそれは絶対に朝だった。

「……姫も、いろいろと忙しいんじゃないですか。あの方だって、お姫様とはいえ、毎日遊んで生活している訳でもないでしょう」

 マティアスは判子を押す位置を人差し指で指示しながらも、俺が不思議に思った問いに対して答えてくれる気にはなったらしい。

「姫は可愛いのは、可愛いけど……まじ、困るわ。なんで、俺なんだろな」

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