重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 急ぎの書類を片付けられて満足したのか、マティアスは判子の乾き具合を確認しつつ書類をより分けた。

「まあ、それは私が思っているだけですけどね。団長は姫ご本人には、理由を聞かれないのですか? その方が早そうですけど」

「彼女の想いには応えられないというのに、俺のことを好きな理由を聞くのか?」

 質問に質問で返した俺に、マティアスは微妙な笑みを浮かべ頷いた。

「確かに……それは、団長のおっしゃる通りです。それを聞けば、自分に興味を持ったと期待させてしまうかもしれないですし。どうしても仕方のない理由で、俺たちは結ばれることはないと言ってあげるのが、振る側のせめてもの優しさですね」

「まあな……」

 忘れられるなら忘れたい初戦の時から、心の内なる暴れている自分の本能を、たまに感じてしまうことがある。

 獅子は怒りを感じたなら、手を付けられなくなる。その時に俺と同等の力を持つ同胞が居てくれれば、暴走を止められるかもしれない。

 だが、ひとたび怒りの感情に全身が染まれば、誰かを傷つけかねない自分には、家族を持つことには向いてないのかもしれない。

 そうだ。姫は人で、獣人でもない。

 何かの間違いがあったとすれば……俺自身があの柔らかな小さな身体を、壊してしまうかもしれない。


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