重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
 それは確かに、彼の思う通りで間違いない。

 気のない素振りというか完全に気がなかったので、サミュエル様本人がそう思ってしまっても無理はない。

「ええ。もし良かったら、一曲私と踊ってくれないかしら?」

 ユンカナン王国ではこうしたダンスを誘う言葉は、通常ならば男性から誘うものだ。

 男性に誘って欲しいと思う女性側は『私をダンスに誘って欲しいんだけど』と、直接言葉にせずに、相手に察して貰わなければならない。

 けれど、身分が高い女性から男性を誘うことは例外的に許されている。そして、現在ユンカナン王国で、私よりも身分の高い未婚女性は居ない。

 つまり、私が男性を踊りに誘えば、誰しも断らずに踊らなければならない。

 この会場に居る他の女性が聞けば、きっと羨ましいと思われるようなことなのかもしれない。

 けれど、絶対的な権力を以て踊ってくれる誰かの真意なんて、そのせいで曇って見えなくなってしまうものだ。

 普通の令嬢であればもし踊ってくれたら恋のチャンス到来だろうけど、私は絶対に全員踊ってくれるので、相手の気持ちがわからない。

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