重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「……珍しいですね。姫。もしかして、誰かに何か言われましたか?」

 すぐにこの出来事の裏に何かがあると察し微笑んだサミュエル様は、噂に違わず温厚で理知的な紳士のようだ。

 これはご令嬢たちも、夢中になってしまうはずだわ。

 こうした社交の場を嫌がっているプリスコットの家雪豹三兄弟を除けば、彼が一番人気になってしまうのも頷ける話だった。

「ええ。お義母様が、貴方をお気に入りのようなの。一度踊って貴方の人となりを知りなさいって。あ……でもこの話は、どうか内緒にしてね」

 私は人差し指を唇に当てて悪戯っぽくそう言えば、サミュエル様は苦笑した。

「今の社交界の中で身分と年齢で言えば、王妃様が僕を姫のお相手にちょうど良いだろうと思われても、仕方ないでしょうね……ええ。単なる条件だけであれば」

「サミュエル様は王族の姫なんて面倒な花嫁を貰わなくても、美しい令嬢は周囲にたくさん居るものね」

 肩を竦めて周囲を見渡せば、サミュエル様に群がっていた令嬢たちが身分の高い私に遠慮して位置を下げたものの、早く話が終わらないかとこちらを窺っているようだった。

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