重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~
「姫は決して、面倒な相手ではありませんよ……それでは、お手をどうぞ」

 サミュエルが手をゆっくりと差し出したので、私はその手を取った。ダンスの前の作法で彼は私の手の甲に軽く口付けた。

「悪いわね。一曲踊れば、私はすぐに行くわ。邪魔は出来ないもの」

 楽団から曲の開始音が響いて、近づき二人踊り出した。

 流石に人気のある彼は夜会で踊り慣れているのか、とても足運びもスムーズで文句の付けようがない。

「それは……お好きなようになさってください。そういえば、今夜、ダムギュア王国の王太子が、こちらに来ているとか。姫はもう彼にお会いになりましたか?」

「いいえ? そう……あの国も、代替わりされたと言うものね。一転してこちらと友好的になったとか」

 この国と国境を隣にするダムギュアは、古くからあるとても歴史が長い国で、彼らに比べれば新興国である我が国ユンカナン王国とは、あまり仲良くしたくはなかったようだ。

 だから、ユンカナンを相手取り何度か戦争をしている。デュークが活躍したという戦いも実はこのダムギュア王国との戦いによるものだ。

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