本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。
 ハリーお兄様との待ち合わせの場所は、広場にある像の前だった。私は馬車から降りると、久しぶりに会えるその人の元へと小走りで急いだ。

「お兄様ー! 久しぶり! 元気そうで良かった!」

 久しぶりに見た兄は、長髪になって後ろに括っていた。妹だからわかってしまうけれど、あれは絶対に髪を切るのが面倒で、無精して髪が伸びてしまっているだけで、伸ばす気なんて全くなかったはずだ。

 まあ、若く見える人なので、お洒落で伸ばしていると言っても信じてくれるだろう。

「ああ。ニコル! 久しぶりだ。妹のお前の結婚式に、出られなかったなんて! 本当に、僕の運命は残酷だ」

 大袈裟な物言いで嘆いた兄は手を広げたので、私はそこに飛び込んだ。

 兄とは年齢が離れていて六つ上なので、私は兄というよりも、父に近い存在として彼を見て居た。

 彼は勉強ばかりしていて腕っぷしはあまり強いとは言えないけれど、何かと厳しい父とは違い、私には何よりも安心出来る存在だ。

 私が彼の胸に甘えるように頭を擦り付けると、兄は頭を撫でて言った。

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