本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。
「そうかそうか。ニコルも人妻になってから、色々あったんだろう。今日は俺がとことん聞いてやろう! 飲み明かすぞー!」

 ハリーお兄様は明るくそう言ったので、私は彼に離婚して間借りさせて欲しいとお願いしなければと思っていた心の重荷が、少し軽くなったような気がした。

 これはお願いすれば聞いてくれそう。

 お兄様は男爵の跡継ぎだから社交シーズンになれば、どこかの令嬢に求婚しなければならない。けれど、仕事で忙しくしていて、極めつけは三年間の留学。

 そういう訳で、まだ意中の女性すら居ないので、私が彼の邸を管理すると言えば、同居することをすんなり許して貰えるかもしれない。

「ええ。そうしましょう! 良い店があるのよ。お兄様。王都でも一番美味しい……」

「失礼。ニコル。こちらは?」

 私は思っても居ない人に強引に肩を引かれ、驚いた顔をしている兄の元から引き剥がされた。

「ライアン? 貴方、何しているの?」

 やはりそこに居たのは、夫ライアンだった。

 本来ならば、ライアンはまだ城で仕事中のはずで、それに彼が発した疑問もよくわからない。

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