本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。
 それに、とても屈辱だった。私はライアンから妻にと望まれていると聞いていたし、傲慢にも彼から愛される価値のある人間であると勘違いしていた。

 彼には何か事情があって、仮の妻を必要としていただけかもしれない。

 一言も話してもいないというのに、自分の事を軽んじられてしまっているという言葉に出来ぬ切なさで、何日も何日も眠れぬ日々を過ごした。

 男爵家の娘が、公爵家に嫁ぐのだ。

 同じ貴族同士ではあるけれど、彼は王族の血を汲む公爵家。こちらは数代前しか遡れぬ新興貴族。二人は身分が釣り合わぬ者同士なのだからと納得するしかなかった。

 公爵家当主でどんな令嬢だって選べたであろうに、ライアンは私のことを妻になんて、迎え入れたくはなかったのかもしれない。

 やがて、うじうじと悩んでいることが、何の意味もない行為だと私は気がついた。

 泣いても悲しんでも、父にそうしろと言われれば、私はあの人と結婚するしかない。

 モートン男爵令嬢として生まれ育った私は、結婚相手を自ら選べる訳でもなく、父から指示された通りの相手ライアンに嫁ぐしかないのだ。

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