本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。
 だから、今夜だけはライアンを連れて行く訳にはいかない。彼だって話の流れで、私の家族に会おうかと言っただけだろうから。

「そう言ってくれて、本当に有り難いわ……けれど、兄も三年間の留学から帰って来たばかりだし、家族水入らずで話したいこともあるから。それに、貴方ならば、きっとすぐに会う機会があると思うわ」

 ハリーお兄様は高級文官として城で働いているし、公爵位を持つライアンだって王太子の傍に居る。

 きっと、彼らが仕事で近く会うこともあるだろう。私はそう思って言ったのだけど、ライアンは何故か、不機嫌な態度になってしまった。

 これは常に感情が安定している彼にはとても珍しいことで、私はこれまでの会話で何か気に入らない事があったのかと慌ててしまった。

 ……久しぶりに会う兄と話をしたいからと言っただけよ。

 仕事へ向かう去り際、兄と会う予定の店の名前まで確認したので、いつもは温和な彼を怒らせてしまったのではないかと不安になってしまった。


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