あなたが囁く不倫には、私は慟哭で復讐を。
 明穂が病院のベッドで目を覚ました頃、吉高は紗央里の両膝裏を抱え上げ、自身を膣に挿入し腰を激しく前後させていた。

「うっ、うっ」

 吉高は自宅の寝室で愛人を抱く高揚感に酔いしれ、紗央里は妻が寝ていたベッドで(むさぼ)られる情事にこれまでにない快感を得ていた。

「ああ、あ!せんせ!先生!」
「紗央里!」
「もっと、もっと!」

 当初は隣近所の手前声を控えめにしていたがそれも慣れて来るとタガが外れ際限なく喘いだ。

「ああ!すごい!」
「うっ、紗央里、うっ!」
「ああっ」

 近隣住民は度々若い女性が家に出入りしている所を目撃し、隣家ではその淫靡な騒音に悩まされた。愛人との愛欲に溺れた吉高はそんな噂話にも気付かず平然とした顔で回覧板を隣の家人に手渡していた。

「ねぇ、せんせ」

 紗央里の背中に飛び散った性液をティッシュで拭き取っていた吉高はその言葉に凍り付いた。

「嘘だろ」
「出来ちゃった、赤ちゃん」
「なんで!」
「こんな《《生でしていたら》》出来るに決まってるじゃない」
「そんな」
「結婚してくれるわよね」

 吉高の膝は震え顔面は色褪せた。

「そ、それは」
「だって私の事、愛してるんだもんね」
「あ、赤ん坊」
「喜んでよ」

 若くして助教授候補と言われていた吉高の人生の歯車は軋み始めた。
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