魔法石の密造人2/極限狂乱・犬エルフ・魔女誕生・新しい幸せ
2
「君、私のことは好き?」

「好きか嫌いかと言えば好きですよ」

 そこで私はレト君の手を引いて、さっき出てきたドアに引き返す。その勢いで、ハンスの目の前で言ってやる。

「浮気しちゃうかも! ハンスお兄ちゃんが構ってくれないなら、レト君と遊んじゃうから!」

「あい?」

 目を白黒させるレト君。
 ハンスは驚きつつも、痛ましい面差しでこう言った。

「うん。レト君さえ良ければ、遊び相手になっってやってくれれば」

 何をやっているんだろう、私は。
 でも限界が来ていた。
 いきなりスカートからパンツを脱ぎ捨て、濡れそぼったそれをハンス兄の顔面に投げつけて、涙目で睨む。

「私、もう前と違うんだから! 何十人も男知ってるし、とっくに汚れてぶっ壊れてるのよ!」

 それまでどうにか抑えていた感情と諸々のストレスやフラストレーションが溢れ出してついにヒステリーを起こしてしまう。困惑しているレト君にキスして、のしかかって、ズボンを引っ張り下ろそうとする。大暴走だ。
 ハンスが慌てて止めにきたので、顔に肘打ちして鼻血にひっくり返す。レト君のズボンの上から強引に跨がって、劣情と恥を押しつけながら腰を振り立ててやる。布越しにティンコを感じながら、私は熱っぽい陶酔に果てる。彼のズボンは私の女の汁でベトベトだった。
 泣き出した私の頭を、レト君が撫でてくれた。
 うん、君は愛人で確定オッケーだよね。
 私はレト君にキスすると、ハンスにアカンベーして、足早に立ち去った。後に残されたハンス兄とレト君は呆然として顔を見合わせていた。


3
 翌日の昼前にパン籠を届けたとき、レト君はたじろいでいたけれど。
 私はあえて何事もなかったかのようにとりすまして、去り際に視線を合わせて、人差し指を自分の唇に立てて触れる。内緒、のポーズをしながらもの欲しげな女の顔をしてしまっていた。レト君はドキッとした男の子の表情で可愛らしい。
 まさか自分がこんな小悪魔めいた誘惑することになるとは、ほんの一ヶ月前までは思っていなかった。たぶん「時間の問題」で、私はレト君ともハンスお兄ちゃんとも寝てしまうに違いない。ハンスお兄ちゃんにはお預けして、私が味わった口惜しさや寂しさをちょっとはわからせてやろうか?
 きっと私は満たされる。
 こんな素敵なボーイフレンドが二人もいるようなものなのだし、私を汚したあんなつまらない男たちのことなんか、彼らが与えてくれる心身の愉しみや満足に比べたら、「靴の裏についた泥」か「スカートの埃」や「パンティの小便のしみ」でしかないから。あのゴミどもめ、殺されて逝った地獄で私たちをうらやみ妬みながら永久に悶えてろ!
 どちらが最後の結婚相手かはわからないし(年下で童貞ちゃんのレト君に、こんな私を一生押しつけるのは気の毒な気もするが、特別な女性として覚えておかせるくらいは罪にはなるまい)、ひょっとして三人目や四人目なのか、それともシングルマザーにでもなるのか。これから私は私なりに、人生の楽しみも幸せも絶対に手に入れてやるつもりだ(魔族ギャングどもにも復讐して、なぶり殺しのオモチャにしてやる)。
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