魔法石の密造人2/極限狂乱・犬エルフ・魔女誕生・新しい幸せ
被告☆ミケナ・フロラ (1)初公判と投獄確定
1
私(アネット)とミケナ・フロラが郊外と町中に仕掛けまくった「対魔族のブービートラップ」は、わずか一ヶ月足らずで十人もの魔族を、死亡や半死半生の捕獲に陥れた。負傷やアレルギーで、捕まらずに逃げ切って表沙汰にならなかった者を含めれば、この三倍くらいはいるだろう。
だが、収まらないのは「魔族利権ギャング」たちだ。魔族が(人間領域で)横暴できるのは、それとつながって利益を得ている人間と深淵(アビス)エルフの大集団ネットワークがあるから。むしろ国内危機はその手の腐敗・ギャング勢力の方がメインの元凶になっているのが現実なのだった。
あのふざけた人間奴隷オークションにしたところで、人間や深淵エルフの無法者・ギャングたちの裏ビジネス。魔術者協会ですら乗っ取られたり、腐敗と歪んだ選民思想で、もはや「人間側の(味方の)魔術者」とは言い難い(だからレジスタンスには離反した魔術者たちも多いが、大部分の魔術者たちは統制下にある)。政治有力者や財界・商売人の多くがその手の後ろ暗い人脈に関与していて、裁判官や学者などもそうなのだ。
そういう人たちからすれば、魔族の浸透と影響力が駆逐され、低下していくことは死活問題だろう。治安が良くなれば職業的な犯罪者たちは生きていけないし、買収や脅迫がやりづらくなれば、ギャングや汚職政治家などは食い上げだから。
だから、ミケナ・フロラは逮捕されて、裁判にかけられることになった。あのトマス巡査が済まなさそうな顔でやってきて、こっそりミケナに「行方不明で逃亡でも良いんじゃないか?」と耳打ちし、私には「しばらく身を隠せ」と。
彼女の場合には、リベリオ屯田兵村の反魔族レジスタンスの構成員でもあったから、その面で政治的な打撃や宣伝を狙ったのかもしれない。頭目のクリュエルの「魔法石器」も「非人道的」とやらの理由で、各地で禁止運動や反対条例の制定が画策されている。いつぞや魔族の病毒テロの解毒剤を作ったサキは「薬事法違反の疑い」「欠陥有毒薬物」などと、魔族シンパの大合唱コーラスで非難され、今でも御用達の学者や活動家たちによる法的告発が続いている。
2
そうして裁判所に呼び出されたミケナ・フロラの表情や態度は、やたらとニコニコとして理解不能に楽しそうで「わーい」と擬音でも付きそうだったらしい(イベントや騒動の主役になれて嬉しかったのか?)。この、傍聴席で様子見していたハンスとトマス巡査の証言は、他の傍聴者たちの語った証言ともほぼ一致している。
「これって、私が今回はヒーロー主人公ってことね! サキちゃんとかぁ、頑張ってて若いのに矢面にされて可哀想だったからぁ、ちっとは仇とってあげるわぁ!」
最初は秘密裁判で隠密理に処理される予定だったらしいのだが、反魔族派の一部の参事会員(議員)や軍関係者などから批判・圧力して、どうにか半公開にしたらしい。秘密裁判ならば魔族ギャングの利権勢力で無茶苦茶な審議や判決がいくらでも出来てしまうため、牽制するためである。
せめて公開の監視下で論争・裁判の記録があれば、現行の司法運用の歪みや異様さを浮き彫りにしたり、糾弾や糺していくきっかけにもなるだろうから。
そして公判の場でミケナ・フロラは初手から愚弄パンチを連打した。
「魔族をやっつけたり追っ払うと、何か都合が悪いことでもあるんですかぁ?」
「私が使った魔法薬やトラップは、魔術道具協会で認可された範囲ですけどぉ? あー、魔族と仲良しの人たちからは嫌われてましたっけぇ?」
魔術者協会があまりにも偏向的で信頼性がないために、近ごろでは離反組の魔術者たちを中心に「魔術道具協会」が結成されている。軍や警察に、魔族犯罪者や深淵エルフの悪行に対抗できる魔法武器や道具類・ノウハウを提供し(クリュエルの魔法石器が代表事例)、ときには応援の人員を送ったりもしている。
いつぞやの魔族との会戦時に、戦列の魔術協会人員が戦闘開始直前に魔術テレポートで敵前逃亡して味方の戦列を見殺し・壊滅に陥れたり、背後から味方の戦士団(防衛軍)に「集団的誤射」するような事例が相次いだ。とうとうついていけなくなって(保身で日和見していた連中だって、流石に「人類の敵」にまではなりたくない!)、魔術協会への服従拒否したり反魔族レジスタンス側につく者が続出した結果だ。当然ながらに、既存の魔術者協会や魔族利権勢力との仲は最悪である。
ミケナ・フロラは魔術道具協会側の構成員だから、その弁論はあからさまで辛辣だった。今や魔術者協会は親魔族利権と異常な選民思想の者たちが残って煮詰まってきているらしい。
「月当たり、幾らくらい賄賂貰ってますかぁ? そっかぁ、裁判官の地位からして、魔族ギャングの後押しでゲットや確保してるみたいなもんですよねえ? だったらあんたらの収入って全部賄賂みたいなものでは?」
「ねぇねえ、やっぱりぃ、深淵エルフの女がそんなに良かったぁ? しゃーないよねぇ、あんたらってモテなそうだしぃ? 若い女あてがわれたら、頭より下半身が優先なんでしょ?」
ついに真っ赤になった裁判官たちは「被告は有罪、執行猶予なしで投獄!」と、声を揃えて喚き立てたらしい。ハンス曰く「見ていて、絵に描いたような滑稽な漫画のような裁判だった」とのこと。
私(アネット)とミケナ・フロラが郊外と町中に仕掛けまくった「対魔族のブービートラップ」は、わずか一ヶ月足らずで十人もの魔族を、死亡や半死半生の捕獲に陥れた。負傷やアレルギーで、捕まらずに逃げ切って表沙汰にならなかった者を含めれば、この三倍くらいはいるだろう。
だが、収まらないのは「魔族利権ギャング」たちだ。魔族が(人間領域で)横暴できるのは、それとつながって利益を得ている人間と深淵(アビス)エルフの大集団ネットワークがあるから。むしろ国内危機はその手の腐敗・ギャング勢力の方がメインの元凶になっているのが現実なのだった。
あのふざけた人間奴隷オークションにしたところで、人間や深淵エルフの無法者・ギャングたちの裏ビジネス。魔術者協会ですら乗っ取られたり、腐敗と歪んだ選民思想で、もはや「人間側の(味方の)魔術者」とは言い難い(だからレジスタンスには離反した魔術者たちも多いが、大部分の魔術者たちは統制下にある)。政治有力者や財界・商売人の多くがその手の後ろ暗い人脈に関与していて、裁判官や学者などもそうなのだ。
そういう人たちからすれば、魔族の浸透と影響力が駆逐され、低下していくことは死活問題だろう。治安が良くなれば職業的な犯罪者たちは生きていけないし、買収や脅迫がやりづらくなれば、ギャングや汚職政治家などは食い上げだから。
だから、ミケナ・フロラは逮捕されて、裁判にかけられることになった。あのトマス巡査が済まなさそうな顔でやってきて、こっそりミケナに「行方不明で逃亡でも良いんじゃないか?」と耳打ちし、私には「しばらく身を隠せ」と。
彼女の場合には、リベリオ屯田兵村の反魔族レジスタンスの構成員でもあったから、その面で政治的な打撃や宣伝を狙ったのかもしれない。頭目のクリュエルの「魔法石器」も「非人道的」とやらの理由で、各地で禁止運動や反対条例の制定が画策されている。いつぞや魔族の病毒テロの解毒剤を作ったサキは「薬事法違反の疑い」「欠陥有毒薬物」などと、魔族シンパの大合唱コーラスで非難され、今でも御用達の学者や活動家たちによる法的告発が続いている。
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そうして裁判所に呼び出されたミケナ・フロラの表情や態度は、やたらとニコニコとして理解不能に楽しそうで「わーい」と擬音でも付きそうだったらしい(イベントや騒動の主役になれて嬉しかったのか?)。この、傍聴席で様子見していたハンスとトマス巡査の証言は、他の傍聴者たちの語った証言ともほぼ一致している。
「これって、私が今回はヒーロー主人公ってことね! サキちゃんとかぁ、頑張ってて若いのに矢面にされて可哀想だったからぁ、ちっとは仇とってあげるわぁ!」
最初は秘密裁判で隠密理に処理される予定だったらしいのだが、反魔族派の一部の参事会員(議員)や軍関係者などから批判・圧力して、どうにか半公開にしたらしい。秘密裁判ならば魔族ギャングの利権勢力で無茶苦茶な審議や判決がいくらでも出来てしまうため、牽制するためである。
せめて公開の監視下で論争・裁判の記録があれば、現行の司法運用の歪みや異様さを浮き彫りにしたり、糾弾や糺していくきっかけにもなるだろうから。
そして公判の場でミケナ・フロラは初手から愚弄パンチを連打した。
「魔族をやっつけたり追っ払うと、何か都合が悪いことでもあるんですかぁ?」
「私が使った魔法薬やトラップは、魔術道具協会で認可された範囲ですけどぉ? あー、魔族と仲良しの人たちからは嫌われてましたっけぇ?」
魔術者協会があまりにも偏向的で信頼性がないために、近ごろでは離反組の魔術者たちを中心に「魔術道具協会」が結成されている。軍や警察に、魔族犯罪者や深淵エルフの悪行に対抗できる魔法武器や道具類・ノウハウを提供し(クリュエルの魔法石器が代表事例)、ときには応援の人員を送ったりもしている。
いつぞやの魔族との会戦時に、戦列の魔術協会人員が戦闘開始直前に魔術テレポートで敵前逃亡して味方の戦列を見殺し・壊滅に陥れたり、背後から味方の戦士団(防衛軍)に「集団的誤射」するような事例が相次いだ。とうとうついていけなくなって(保身で日和見していた連中だって、流石に「人類の敵」にまではなりたくない!)、魔術協会への服従拒否したり反魔族レジスタンス側につく者が続出した結果だ。当然ながらに、既存の魔術者協会や魔族利権勢力との仲は最悪である。
ミケナ・フロラは魔術道具協会側の構成員だから、その弁論はあからさまで辛辣だった。今や魔術者協会は親魔族利権と異常な選民思想の者たちが残って煮詰まってきているらしい。
「月当たり、幾らくらい賄賂貰ってますかぁ? そっかぁ、裁判官の地位からして、魔族ギャングの後押しでゲットや確保してるみたいなもんですよねえ? だったらあんたらの収入って全部賄賂みたいなものでは?」
「ねぇねえ、やっぱりぃ、深淵エルフの女がそんなに良かったぁ? しゃーないよねぇ、あんたらってモテなそうだしぃ? 若い女あてがわれたら、頭より下半身が優先なんでしょ?」
ついに真っ赤になった裁判官たちは「被告は有罪、執行猶予なしで投獄!」と、声を揃えて喚き立てたらしい。ハンス曰く「見ていて、絵に描いたような滑稽な漫画のような裁判だった」とのこと。