どーる
画廊に顔を出す時は、なるべく若さが出ないよう髪を夜会巻きにし、エルメスやシャネルのスーツを身に付ける。中身はどうあれ、画廊に並べる絵画や長年任せてきた女性達に敬意を表して。

関東在住のガソリンスタンドチェーンオーナー。と言っても母親が会長で名前だけのオーナー、お台場にマンション購入後、頻繁に誘われるのだが、実は俳優アウディの友人。三人で会ったこともあれば、アウディ父である大俳優の楽屋でバッタリ、と言う機会もあるのだが、大俳優に憧れている分、可愛がられている女に手を出したくなるのかしら。女には理解できない心理。

この男性三人と食事する場合、優位なのはやはり大俳優で、隣に座らされ人形のように抱っこされたりする。どーる。若い二人を視覚的にイジメることが好きな大俳優。
アウディも 恵まれた環境に育ったため嫉妬や束縛には無縁。父の傍若無人ぶりには苦笑と言ったところ。最低限のマナーで 「父がごめんな」と謝ったりする辺りが育ちの良さ。
ガソリンスタンド経営のコムサはこんな時、帰りは必ず送るふりをして、夜景の見えるバーに連れて行くのだが、大俳優が触った私の身体を触りたいだけ。どーる。ちっぽけな理性で、わざと人目に付く真ん中ソファー席に座るあたりが笑える。

指をからめたり、腰を抱いたりしてギリギリ欲望を押さえ、大俳優の贈り物のジミーチュウを履いている足首をちらりと見たり。
したたかに酔って高層エレベーターで地下駐車場に向かう短い時間が1番好き。コムサがそれまで押さえていた自分を支えきれなくなり、この世の終わりのような深い溜息を付いた後、強引に舌を入れてくるからだ。男がどうしようもなくなって悶絶する瞬間の荒っぽいさが好き。どーる。
< 16 / 18 >

この作品をシェア

pagetop