どーる
画廊の近くのビルでは毎週末必ずお見合いパーティが開かれている。夕方になるとゾロゾロと男女が下りてきて ビルの前に一旦人だまりができた後、散々五々と散って行く様子が面白い。

毎週、同じ男が女性と連れ立って最後にビルから出てくるこのだが、肩から羽織るセーターや素足にモカシン、といった出で立ちがどうも石田J気取りであることに気付いた。顔や髪型、背の低さも激似。もちろん相手の女性は毎週違う人。
そんなJが、ある日女性の肩を抱いて画廊に入ってきた。絵の前に立っては語りだす自分自慢。

没した歌舞伎役者の子孫であること。

庭の手入れにそろそろ庭師を頼む時期であること。

離れの補修が終わらないと困ること。

・・聞かれてもいない祖先の話など語るあたりが怪しげ。

受付で記帳された住所は確かに郊外の一個建てではあるものの、女性が離れた隙を狙って手早く書き、受付帳を閉じてしまうあたりが、ますます怪しさいっぱい。
ついでがあったから彼の家の住所を入れておいたナビを起動させて都下まで車を飛ばしてみた粘着質な私。

案の定、離れも無ければ庭も無い、軒先に牛乳パックを乾かしているだけの都営住宅が 庭師の入る彼の家。表札だけは合っていたわ。
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