🕊 平和への願い 🕊 ~新編集版~ 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて
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 これ以上嘘をついてはいけない、

 義母の電話から10日が過ぎた朝、覚悟を決めた。
 衝撃を与えるかもしれないが、本当のことを言うしかないのだ。
 決意を固めて台所に向かったが、食欲はまったくなかった。
 今朝も牛乳しか入りそうになかった。
 飲み過ぎも影響して固形物が入らないのだ。
 ダイニングテーブルの上には潰れた缶が7本散らばっていた。
 それでも前日よりは2本少なかったが、連日の飲酒が肝臓に負担をかけているようで、最後は気持ち悪くなって吐きそうになったことが思い出された。

 さて、
 身も心もボロボロだったが、なんとか歯磨きをして、顔を洗って、髪を整えて、ワイシャツと背広を身に着けた。
 ネクタイはもう何年もしたことがない。
 サマーカジュアルだったものが年中カジュアルに変わったからだ。
 それでも客と会う時のために会社に3本のネクタイを置いているが、それもほとんどする機会がない。
 客の会社も年中カジュアルになっているからだ。
 ネクタイを製造販売する会社は大変だろうな、と思いながら靴を履いてマンションを出た。

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